「よし、区切りがいいから今日はここまで」
 4時間目の数学は先生の指示で、終業の10分前に終わった。
 「来週の月曜からまた新しい単元…今度は複素数のとこだな。をやるから予習等はしなくてよろしい。
  じゃ、授業終わり。ほかのクラスはまだやってるから、静かにな」
 そう言い残し、礼もしないうちに先生は教室を出て行った。
 途端、教室は徐々にざわめき出す。
 まぁ、こういう時はそういうものだ。そして隣の教室の先生がやってきて叱責を受ける。
 このパターンは世代が違えど半永久的に繰り返されるんじゃないかって思ってしまうほどだ。
 私ももちろん例外ではないのだが、今は何故か妙に眠たかった。
 何故か…じゃないな。
 この席は窓際なので、直射日光の暖かさが眠気を誘発している。
 まぁ、どうせ次は昼休みだし、ゆっくり寝ておこう…。

 『…』
 声だ。また、声が聞こえる。
 つまりは、また、あの夢を見ている、ということだ。
 明晰夢というものは正直言って気持ちのいいものではない。
 だけど、私はこの夢の先が気になっている。
 昨日の夢はその前に比べてやや具体性に欠けていたが…。
 『…』
 『……』
 やはり子供の声だ。そして、ここは…。
 間違いない。児童公園だ。
 見覚えがあるような、ないような…どこにでもありそうな平凡な公園だ。
 ブランコがあって、滑り台があって、砂場があって、ジャングルジムがあって、ブランコがあって…。
 そんな、ごくありふれた公園の風景だ。
 『…』
 砂場の周りに、数人の子供が集まっている。
 男女合わせて、5〜6人くらいだろうか。
 声はその子達のほうから聞こえる。
 『…ねぇ、歌ってよ…!』
 (…歌?)
 歌って、という男の子の声だ。
 だが、誰に向けられているかは分からない。
 それに、何を歌えと言ってるのかも。
 私は、そちらに注意深く耳を傾けてみた。

 「綾乃!」
 「…へ?」
 目の前に珪子がいた。
 「いつまで寝てるの?もうそろそろ昼休み終わっちゃうよ?」
 「え!?今何時?」
 「もう12時55分。次は体育だから、早く着替えなくちゃ」
 よく見ると、教室には誰も残っていない。
 私と珪子の二人だけだった。
 ちょうど、体育の授業は、女子はこの教室で更衣するので、それについてはちょうどよかった、というか助かったわけだが。
 「うっ…しまったぁ…ずっと寝てたからお昼ご飯食べれなかった…」
 「それどころじゃないってば。体育の教師はちょっとでも遅刻するといちいちかなりうるさいからさっさと着替えて!
 待っててあげるからさ」
 「う〜…けいちゃん、ごめんね…」
 そんなに長い時間寝ていたのか、私は。
 実質、12時に授業が終わったから、まるまる1時間近く机の上に突っ伏していた事になる。
 それに、眠った後とは思えないほど疲れているような気がする。
 先の見えない夢だから、だろうか?
 「ほら、綾乃!ぼ〜っとしてるんなら置いてくぞ!」
 「あ!ごめん!!」
 とりあえず、今は夢のことはおいとくことにしよう。
 授業を最優先にして、また時間的にゆとりが出来た時に考えればいい。
 そう頭を切り替えた私は、大急ぎで更衣を済ませた。


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