そんな調子で放課後。
私と珪子は、クラブは未所属なのであとは帰るだけ。
「ね、綾乃、今日どっか寄ってく?」
「ん…そうだね。せっかく久しぶりに一緒に帰れそうだし」
「んじゃ、こないだから言ってたケーキ屋行こ!1度食べてみたかったから」
ケーキ屋さんかぁ…。
確かに、なんとなく甘いものが食べたくなった。
「うん。じゃ、そうしよっか。すぐ行く準備するからちょっと待っててね」
「準備って…鞄の中に荷物詰めるだけじゃないの?」
「ちょっと職員室に行かなきゃいけないの。先週にもらった数学のプリントをもらいにね」
「やれやれ…それくらい、私のコピーさせてあげるからさ、ほら、早く!」
「そだね、んじゃ甘えさせてもらお」
「まったく、なんのための友達なんだか」
珪子が苦笑する。
その後、先にコンビニに寄って珪子のプリントをコピーさせてもらってから、二人で最近ちょっと噂になっている
ケーキ屋さんに行ってみた。
約1ヶ月くらい前の週刊誌に掲載された事でこの店のケーキは最近になって女子高生の間ではちょっとした
ブームになっている。
そこで2人してモンブランのケーキを食べながら、単なる世間話に興じ、1時間以上は店に居座っていた。
「あれ…?まだこんな時間なのに…」
珪子が腕時計を見る。
「なに?時間がどうしたの?」
「ほら。今、だいたい5時10分。まだ明るい時間帯のはず…だよね?」
「だって、もう晩秋でしょ?いやでも日の暮れる時間は早くなるよ」
「だからって、もうこんなに日が傾くなんて、早いよね〜」
「早く感じてるんじゃなくて、実際に早いんだもんね。でも、こればっかりはどうしようもないよ」
「そうだね。んじゃ、そろそろ帰ろっか。明日また学校でね!」
「うん、それじゃ」
こうして、私はこの日の帰路についた。
「ただいま」
誰もいない家に、誰もいないと分かっていても一言、挨拶をして入る。
非常に些細な事かもしれないが、私が今習慣づけていることだ。
そしてまず、仏壇に向かって、『育ての』両親に帰ったことを報告。
そのままエプロンをつけ、お米をとぎ、野菜を切る。
我ながら随分早く一人暮らしが板についたなぁと感じた一瞬だった。
そしてご飯を食べ、適当にテレビのチャンネルを回し、毎週欠かさず録画しているドラマの予約をセットする。
そしてあとはニ階の自分の部屋に移動し、好きな音楽を聞きながら雑誌を読み、ちょっとだけ
今日コピーさせてもらった数学のプリントに目を通す。
特に宿題だとか、そういう指示は受けてないから、その程度で充分だろう。
やがて、11時を回ったので、お風呂に入り、歯を磨き、今の電気を消して就寝。
こんなことが淡々とできる自分は薄情なのかな…そんなことをちらっと頭によぎらせつつ、その日は床についた。
『…』
声が聞こえる。
一つじゃない。二つ三つでもない。
結構、大勢のようだ。
そして、その声も、大の大人の声じゃない。
いくつか、具体的な数は分からないが、全てが幼い子供の声だ。
だが、どこから聞こえてくるのかは分からない。
その声が一箇所に集中しているのか、あるいはてんでバラバラの場所から
聞こえてくるのか…その区別さえつかない。
『…』
ただ一つ分かったのは、この声が歓声であること。
子供達が公園で遊んでいるかのような…そんな声だ。
『一体、この声、どこから…』
そしてもう一つ気が付いたのは、これが夢であること。
夢の中で、自分は夢を見ていると気付く、不思議な感覚。
明晰夢と呼ばれるものだ。
ただ、この夢が何を表しているのかは、さっぱり分からない。
見当もつかない。
私が『その時』分かったのはそこまでだった。
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