気が付けば、辺りは真っ暗だった。
私は自分の部屋の床の上で寝ていた。
くしゅん!
部屋の床には絨毯を敷いているとはいえ、それだけで耐えられる寒さではない。
夜ということもあり、部屋自体がかなり冷え切っていた。
…とはいえ、私はどうしてしまったんだろう?
気が付けば、自分の部屋で昏倒している…そんな感じだった。
確か、私は買い物から急いで帰ってきて、父の部屋の本棚から昔の文献を持ち出して…。
凶兆についてを調べて…。
だめだ。そのあたりまでしか思い出せない。
まるで、昨日の酔いが今日にまで回っているように、考えれば考えるほど頭が痛くなってくる。
それよりも。
今、何時くらいだろう?
私は部屋の電気をつける。
壁にかかった時計は10時30分頃を指している。
確か、買い物袋は玄関に置きっぱなしにしていたはずじゃ…。
肝心な事を思い出した私は急いで部屋を飛び出し、玄関の買い物袋の中身を急いで冷蔵庫にしまった。
この寒さのためか、それほどぬるまっていなかったのが幸いだった。
それがひととおり終わって、私は何も考えずに自分の部屋に向かった。
私は正直、大分疲れているのかもしれない。
早めに寝て、明日は現状をしっかりと珪子の母親に話し、相談にのってもらおう。
早めに寝る分、長い時間、あの夢を見ることになるのだろうが…。
…あの夢?
…そう、さっきの夢だ。
そういえば、『夢』はさっき見たぶんで始めて「区切りよく」終わっていた。
今まではなにか中途半端なところまでしか見ていなかったが、さっきの夢は、一応そこで区切りをつけて終わっていた。
だとしたら、今日はあの夢を見ずにすむのかも。
あるいは、今日見なかったら、明日からも見ずにすむのかもしれない。
そのあたりはどうなのだろうか?
そんなことを考えて階段を登ると、さっきは気付かなかったが、父親の部屋から2〜3冊の本が転び落ちている。
…何故?
私がさっき読んでいた本は1冊だけ…。それも本棚に直したはずだ。
疑問に思った私は父の部屋に向かい、電気をつける。
「…!」
本棚が斜め向きに倒れかけ、本が雪崩になって落ちている。
本棚自体にも、いくつかの切れた跡が点在する。
この様子だと、雪崩れて落ちた本の中にも真っ二つに切れた本もあるだろう。
…誰が?一体いつのまに?
私が部屋で気を失っている間だろうか?
だとしたら、何故こんな無意味な事を?
もし、私がやったとしたら…いや、それはない。
私の腕力では、こんなに重い本棚はひっくり返す事も出来ないし、加えてこんなに鋭利に切れる刃物も持っていない。
…あまりにも、奇怪で不可思議だった。
これは、いわゆる超常現象の一種ではないだろうか。そうも感じてくる。
いずれにせよ、私一人の力じゃ、この部屋を元に戻す事は出来ない。
明日は珪子の母親に相談に乗ってもらうという用事があるというのに、どうしたものやら。
とりあえず、私は部屋からはみ出している本を部屋の中に移し、ドアを閉めた。
もちろん、このまま放っておくわけではない。
ただ、今はもっと根本的な問題が目の前に肉薄しているのだ。
だから、それが解決するまで…少しの間、待ってて下さい…父さん。
そう心の中で呟きながら、私は唇を噛み締め、自分の部屋に入っていった。