「…っ!」
 どうやら、目が覚めた様だ。
 「…綾乃?それに、佐伯さんも…」
 和也が横で呟く。
 「?」
 「いや、忘れてくれ。多分、単なる偶然だろうから」
 不可解な言葉を残して和也は台所に入っていった。
 「コーヒー作るから」
 「え?あ、うん、ありがと。私、できたらカフェオレの方がいいんだけど」
 「注文の多い奴…まぁいい。分かった」
 そう和也に声をかけ、私は少し、さっきの夢の事について考えた。
 今の感じだと、多分、今晩に見る夢の続きはだいたい察しがつく。
 つけたくもないが。
 あの子供の歌にはどうやら魔力というか…普通にはない『力』があったようだ。
 もしかすると、歌に限ったことではないのかもしれない。
 しかし、私はまだその歌っている子供の顔すら見ていない。
 ただ、なにか恐怖の片鱗を秘めたような魅惑の歌声を聞いただけだ。
 「雨宮さん…ちょっといいですか?」
 「ん?あ、はい。どうぞ。ぼけっとしちゃってごめんね」
 佐伯さんが不意に横から声をかけてきた。
 「私、今すごく奇妙な夢を見たんです」
 「奇妙な夢?」
 「ええ…奇妙というか…もうあと10分も寝ていれば多分うなされるくらいの怖い夢でした…」
 え…それって…。
 「公園のようなところで、子供達が集まってるんです。その中央にいる子供…男の子なのか
  女の子なのかは分かりませんでしたが、歌い出すと周りの子供達が宙に浮いて…そこで
  目が覚めました…。あのままいくと…」
 私は完全に絶句した。
 普段から、彼女の強烈な天然には絶句させられたこともあったが、今回限りはそういうわけではない。
 「それって…今、私も同じ夢見てた」
 私は正直にそう答えた。
 「え…」
 「二人で同じ夢を見てた…ってことだよね?これって…」
 「ええ…そうなりますけど…こんな夢、見るのも初めてです…」
 その発言で、なにかが音を立てて壊れた。
 つまり、私はここ3〜4日見続けている夢を、彼女はすっとばして今日初めて見た、ということだ。
 ということは、彼女が今日、私と同じ夢を見ているのは私の家に泊まったから、ということになる。
 それをさらに発展させて言うならば、この夢の元凶は私。
 私が見ている夢をみんなにも見せている。
 そう考えるとつじつまが合う。
 「ほい、これ綾乃のカフェオレ。残りのふたつから好きな方取ってよ、佐伯さん」
 「え?ふたつ…?あと三人いるのに…」
 「ああ、あのバカはまだ寝てるから起きるまでほっときゃいいんだよ」
 そう言えば、珪子はまだ寝ている。
 となると、彼女だけまだ悪夢にうなされているのだろうか?
 「ねぇ和也、ちょっと聞いていい?」
 私は真剣な表情で、和也に迫った。
 「ん?どうした、やぶからぼうに?」
 「昨日見た夢って…覚えてる?」
 「夢?だいたい覚えてるけど、あんまし聞いてていい気分するような夢じゃなかったな…」
 「もしかして、子供が空を飛んでるような夢ですか?」
 佐伯さんも和也に尋ねる。
 「ああ、そうだけど…なんで分かったんだ…?ってやっぱし…」
 「和也も…同じ夢見てたんだ」
 「なるほどな…どうりで三人同時に目が覚めたわけだ。てっきり偶然だと思ってたけど…」
 やはり、和也も同じ夢を見ていた。
 多分、私のせいだろう。
 「しかし、夢の内容といい、三人同時に同じ夢を見ることといい、なにか妙だな…」
 「もしかすると、なにか危険な事が起こる前触れなのかもしれませんね」
 「うん…そうだね」
 私はとても自分から口には出せなかった。
 こんな夢をもう3回も4回も連続して見ているという事実を。
 そして、この夢の元凶は私にあるということを。
 「さしあたっては…こいつか」
 和也が珪子の方に視線を向ける。
 「そうですね…越智さんが目を覚ましたらあとで聞いてみましょう」


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