『 落ち葉が
 
  街の地面を赤銅色に染め

  日差しはゆっくりと南に傾き

  人々は厚手の服を着て

  足早に各々の道を向かう

  少し前には溢れていた活気が

  今は少しなりを潜めている

  空は雲を所々にちりばめ

  時折 強い風が吹き去る

  過ぎ行く人々の息は白く

  しかしすぐに透明に 大気に溶け込む

  秋…

  そしてその秋もそろそろ終わりを告げようかという頃

  冬がすぐ目の前に見えていた

  冬は美しい

  しかしその美しさは

  どこか寂しく

  瞬く間に消える

  その冬が

  もう間近まで来ていた 』

  
 …赤。
 鈍い、赤。
 見方によっては、茶色とも取れる赤。
 私の、嫌いな色だった。
 
 『お父さん!どうして、こんな…!!』
 病院の一室。
 私は、嫌いな色を、自分の父親から見てしまっていた。
 交通事故。
 話によると、突然の急カーブを曲がりそこなったらしい。
 車は大破、母親はすでに即死状態だった。
 『…よ…よく、聞いてくれ…綾乃…』
 すでに半死半生の父親が、精一杯の声で呟いた。
 もはや呟くのが限界…そう私には捉えられた。
 私は焦りながらも、極力冷静に努め、父親の声に必死で耳を傾けた。
 『綾乃…今まで俺のことを父さんと呼ばせた事を許してくれ…』
 そこで私が聞いたのは、全く想像すらしなかった言葉だった。
 『…え…?』
 『今の今まで、黙っていたが…お前は父さんと…母さんの子じゃ…なかったんだ…』
 『そんな…!!』
 自分が混乱していくのが手に取るように分かった。
 ただ、そう言われれば、納得のいく部分もあったのだ。
 それゆえに、頭の中は混乱を極めた。
 『お前には幼い頃の記憶がないはず…そしてそれをお前自身が不思議に思わない
  ように…細工したのも…この俺だ…許してくれ…』
 それ以上先は聞こえなかった。
 集中治療室へと移された父親に話の続きを聞くことは無理だった。
 そのまま、父親も帰らぬ人となってしまったから。

 それから1週間が過ぎ、ようやく落ち着きを取り戻した私は、記憶の糸を順番に手繰り寄せている。
 私は幼い頃、家の階段で転倒し、一度記憶を喪失した。
 それは憶えているが、何故階段で転倒したのか、とか、その直前に何をしてたのかとかは、まるで思い出せない。
 ただ、漠然と、階段に落ちた。それだけだ。
 …悩んでも答えは出ない。
 こうなれば、記憶の断片を辿って本格的に調査したほうがよさそうだ。
 自分の事を調査するというのも、なにかおかしいが。
 ただ、父さんが死ぬ間際に残した言葉…それは、私には別に両親がいるということ。
 もし、それが本当なら(疑う要素はないけど)、その両親のことについても知りたい。 
 …まぁ、今日は遅いからもう寝よう。
 明日から、色々調べていけばいい。
 父さんや母さんと親しい人を尋ねれば、何かわかるかもしれないし。
 明日から…


P・P 〜Phychological Parasite〜


 …。
 …聞こえる。
 …かすかだが、子供の声が。
 幼い子供の声だ。
 …それ以前に、ここはどこだろう。
 視界がぼやけて、よく見えない。
 …。
 そうしているうちに、ゆっくりではあるが目も慣れてきた。
 ここは…児童公園のようだ。
 ジャングルジムに滑り台、そしてその下には砂場。
 ややはなれた位置にはブランコがあった。
 周囲は民家に囲まれている。
 どこか見覚えのあるような、懐かしい風景。
 だが、私の記憶の中には、ない風景だ。
 既視感…デジャヴというものだろうか。
 私はこれが夢である事を理解できなかった。

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